他人の手

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繁華街の入り組んだ裏路地を迷わず進んで行く。正直、自分が今どの位置に居るのか判らなくなりそうだ。それくらい、似たような道が続いている。 現在仲間を仕切っているのは梼貴だ。この辺の地理にめちゃくちゃ詳しい。だから、ミヤビの場所だって、他のチームの場所だって知ってる。実質人間カーナビだ。 「うわっ!?」 「え、何聖。どうしたのさ」 「す、滑りそうになったんだぁよ……」 聖の足元を見るとバナナの皮があった。良く滑るもんなあ、バナナって。にしても、 「滑って転べば面白かったのに……」 「ゆ、由衣!? 酷ぇこと言うなぁよ!」 あ、思ったことが口に出てたみたい。あー、聖が涙目! かぁわいい。とりあえず、機嫌損ねないよう謝っとこう。 「ごめんごめん。痛がってる聖可愛いだろうなーって思ってついな」 「……こんのドSが」 「いーのかなァ? そんなこと言っちゃって~」 聖の肩に手を伸ばし、引き寄せる。至近距離になった聖の耳に、私はふぅっと息を吹き掛けた。 「──ッ!」 意味不明な言葉を発した聖は、私の腕から力ずくで離れた。私が息を吹き掛けた方の耳を両手で押さえ、顔を真っ赤にして口を金魚みたいにパクパクさせている。 この反応の良さが堪んねえっ! もーちょいやろうかなぁ……。  
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