他人の手

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  「由衣。そろそろ着くから止めな」 梼貴に言われたから止めておこう。怒らすと怖いんだもん。 「へーいへい」 頭の後ろで手を組み、梼貴の後を追う。 背中に聖の視線がちくちくしたけど気にしなーい。 角を二回曲がったら、廃墟になったレストランっぽい店が見えた。梼貴曰くあれがミヤビの拠点らしい。 「おい、テメーら」 乗り込む前に、私はぐるりとみんなの顔を見回した。 「思う存分暴れろ。楽しめ」 それぞれに頷き、私は満足げに笑む。 「──行くぞ」 萪霧依が代表として、扉を開けた。 「……よう。新しいミヤビの頭は誰だ?」 私が先頭で入って、辺りを目だけで確認する。敵はざっと三十人。数だけで言えばこちらが不利なのは一目瞭然。だが、私の集めた仲間は、半端なく強い。この私が保証するんだ。負ける訳がない。 「俺が──雅の新しい頭、橡遼(つるばみりょう)だ」 ニヤニヤと品のない、気持ち悪い笑みを浮かべ、橡は椅子から立ち上がる。 「アンタ、誰だ? いきなり入って来てよォ。舎弟にして欲しいのか? かわいー顔してさあ、くくっ」 「ッてめ──!」 「聖」 殴りかかりそうになった聖を止める。舌打ちした聖は、人一倍仲間を思っている。だからきっと、今の言葉は私たちに対する侮辱だと思ったのだろう。  
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