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あれ、と私は違和感を覚える。“あの”恵梨が居るのに、リビングが煩くないのだ。
「これは……真剣な話でもしてるのかな」
無意識に、小さく呟く。私は気配を消して、リビングに続く扉の横で聞き耳をたてた。
「わたし、いえ、わたし“たち”は、わたしと、片割れと、由衣ちゃん意外てどうでもいいんだよね」
この声は、恵梨。本気で真面目な話をする時の、話し方。
「恵梨の言う通り、わたしも、わたしと恵梨と由衣ちゃん意外はどうでもいい。それは、キミ……日下部章弘も同じ」
梨恵も、真面目だ。抑揚のない、相手を傷つけても構うことない話し方。
「はあ……」
曖昧に返事をするアキも、声に何かの感情が混じってる。私には、それが何かわからないけど。
「要するに、わたしと梨恵は、由衣ちゃんの為に動いてる訳なんだけど……解るよね? 日下部章弘。キミの能力をわたしたちは買っている」
「そして、わたしたちはキミにしか出来ないことをキミに頼みたい。キミの行動一つで、由衣ちゃんがどうなるかが決まる。最も、どれを選ぼうが、由衣ちゃんには地獄が待ってるけどね。そうだよね、恵梨」
「うん、そうだよ、梨恵。ただ、どれを選ぶかによって、地獄に居る長さが変わる。キミの努力にもよるだろうけど」
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