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──堕ちればいい。
私は、幸せになるんだから……!
「そうよ」
無邪気な笑顔で、私が“私”を見上げた。
「おねえちゃんがおちれば、わたちは、ちあわせになるの。今よりも、ずっと。ずぅーっと」
だから──……。
「おちてよ。やみのおくそこまで。そこではい回って、くるちんで、もっと、もぉーっと、ふこうになって」
とん、と小さな手が私のお腹あたりを軽く押す。ふと、後ろに抗えない力を感じ、見てみると、そこに広がっているのは、真の闇。
「わたちのために……ね? さよーなら、おねえちゃん。二度とあいたくないわ」
闇から伸びる手に身体を掴まれ、思考が奪われる。
最後に見た、いたいけな少女の表情は──悪魔よりも悪魔らしい笑みだった。
全てが闇に引きずり込まれた瞬間、私は……一筋の光の糸を見た。
そう、まるで、神様が地獄に垂らした蜘蛛の糸のようで……眩しくて眩しくて、目がくらんだ。
それでもなんとかその光を掴むと、一気に闇から引き上げられた。
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