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「御志波さんっ!」
必死な、声。
身体をぐらぐらと揺すられ、頭が痛い。
「起きて下さい、御志波さんっ!」
誰……だよ、ったく。
名字は、嫌いだって、言ってんだろ。
「御志波さん!」
「だーッ! うっせぇ!」
勢い良く起き上がったら、腹筋が痛かった。何なんだよ、ったく……
「……よかっ、た」
心底安心したような表情のアキは、私にすがりついた。
「状況、読めねぇ……」
「……風呂場で、のぼせて倒れてたんですよ」
ふーん。風呂場で、ねえ……。
「あ、着替えさせたのは、近所の人ですから! 断じて僕は見てません!」
「見られても別に減るモンじゃあるめーし、気にしてねぇよ」
……ほんと、気にしてないからそんな顔すんなよ。悪ィことしたガキみたいな、そんな顔。
「そうですか……。立てますか? リビングに行きましょう、ホットココアを飲んで落ち着いて下さい」
「立てるけど……何で、落ち着かなきゃなんねーの?」
「うなされてました」
こりゃ、ポカやっちまったかも知んねぇな……。のぼせてブッ倒れること自体ポカなんだがな。そのうえ、あの悪夢。ぼんやりとしか覚えないが、悪い予感がする。
……杞憂だと、いいんだかな。今はただ、そう願うことしかできない。
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