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ベッドから立ち上がった私にアキが包み込むような柔らかさを含んだ笑みを向ける。ああ、嫌な笑み。
「お礼、言ってあげてくださいね」
言うと同時に、扉を閉めた。
お礼、って、誰に……? まさか、私にパジャマを着せてくれた近所の人!?
「……あ、これアキのパジャマじゃん」
下着とかあるからかな? あー! 赤面するアキ見たかった!!
惜しいことしたぁ……
ひとしきり笑って、リビングに向かった。
扉を開けると、白い革製のソファにでかでかと座って、珈琲を啜っているピンクブロンドの髪の長い女性。端正な顔立ちで、日本人ではないことは一目瞭然なんだが、何と言うか……見た目とポーズにギャップありすぎで、思わず絶句してしまった。
「ん? やあ、美少女、起きたか。頭痛がしたり、身体のどこかが不自然に痛かったりしないか?」
「え、と、ないっス。迷惑かけたみたいで……スイマセン、それと、ありがとうございます」
不思議な威圧感に緊張しながら返すと、優雅な仕草でカップをソーサーに戻した美人サンは大口開けて笑った。何の飾りっけもなく笑うその姿は、繊細な見た目とは真逆だが、大半の人間が好感の持てる人だろう。
「そんな堅くならなくていい。こっちが肩こるだろう。敬語もいらん。何時も通り話してくれ給え。由衣ちゃんだったか? 異常がないようでなによりだ」
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