13人が本棚に入れています
本棚に追加
/71ページ
「私の家は、無理だから」
「わかってますよ。そんなこと」
言い方が冷たいよ、日下部。心の中でめちゃくちゃに罵ってやろうかと思った矢先、日下部は「あ」と思い出したかのように付け足した。大方、私の思ったことが判ったのだろう。私って、顔に出るらしいから。
「女性の家に夜居ると、妙な疑いがかかりますからね」
「じゃあ、どうすんだよ」
「俺の家にしましょう」
「何故私ン家は駄目で、お前ン家は良いんだ?」
意味不明だぞ。私としては、夜男ン家に行く方が危険だと思うが。
「俺はあなたを襲う気にはなりませんから。好みの女性像とかけはなれていますしね」
ひでぇ言い草だなあ、オイ。でもまあ、ビビられるよりマシか。
「んじゃ、夜行くから」
ピラピラと手を振り、日下部に背を向け歩き出そうとしたところで、腕ん掴まれた。もち、日下部に。
「あー。何?」
「何って、今から行きますよ」
「え、何で」
「間に合わないからです」
「あーあー。えっと……。じゅ、授業はどうすんだ?」
「今は放課後です」
「うッ! えーと。ほら、お前の両親……」
「一人暮らしです」
あっ! 私の言葉を遮りやがった。くそう。日下部のくせに。
最初のコメントを投稿しよう!