他人の手

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  「私の家は、無理だから」 「わかってますよ。そんなこと」 言い方が冷たいよ、日下部。心の中でめちゃくちゃに罵ってやろうかと思った矢先、日下部は「あ」と思い出したかのように付け足した。大方、私の思ったことが判ったのだろう。私って、顔に出るらしいから。 「女性の家に夜居ると、妙な疑いがかかりますからね」 「じゃあ、どうすんだよ」 「俺の家にしましょう」 「何故私ン家は駄目で、お前ン家は良いんだ?」 意味不明だぞ。私としては、夜男ン家に行く方が危険だと思うが。 「俺はあなたを襲う気にはなりませんから。好みの女性像とかけはなれていますしね」 ひでぇ言い草だなあ、オイ。でもまあ、ビビられるよりマシか。 「んじゃ、夜行くから」 ピラピラと手を振り、日下部に背を向け歩き出そうとしたところで、腕ん掴まれた。もち、日下部に。 「あー。何?」 「何って、今から行きますよ」 「え、何で」 「間に合わないからです」 「あーあー。えっと……。じゅ、授業はどうすんだ?」 「今は放課後です」 「うッ! えーと。ほら、お前の両親……」 「一人暮らしです」 あっ! 私の言葉を遮りやがった。くそう。日下部のくせに。  
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