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まァ、あのあと色々言い合いして、私達はアキん家に行くことになった。
あー、アキってのは章弘だから。だって日下部って長ぇんだもん。アキのほーが、言いやすいし可愛い。
アキに勉強教えてもらって、今、アキは風呂だ。その隙に私はアキのマンションを抜け出して、倉庫に向かう。いつもの仲間ンとこにだ。
「やぁっぱ、アキって頭良いから教えんのも上手いわ」
私は違和感を覚えていた。人から差し伸べられた手は、初めてではない。だが、私はその手を取る方法がわからない。
だからか、やはり疑っているのだろう。“ああ”なる可能性は低い。それでも、用心しておかねば、私の精神上、安定しない。
錆び付いた音を立てて、扉を開ける。
「由衣……おかえり」
優しく出迎える梼貴(ゆずき)に、ここが私の居場所だと痛感する。
「ゆーずきっ」
走って行って、梼貴に抱きつく。
「──大好き!」
ちゅっと頬にキスをすれば、梼貴も私の頬にキスを返す。この瞬間が、私が生きてることを教えてくれる。
「俺も、由衣のこと大好きだよ」
「なあ、みんなは?」
「もうすぐしたら来るよ。……っと、ほら、早速お出ましだ」
抱きついていた梼貴から体を離し、扉を見るとオレンジの髪が目についた。
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