他人の手

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  「萪霧依(かむい)だ!」 「おっす、由衣。珍しく早いじゃねーか」 萪霧依にも挨拶のキスをする。あー、萪霧依のほっぺぷにぷにだからキス心地が良い。 「あと、来てねーのは大和(やまと)と聖(ひじり)だけだな」 「もー来るぜ」 「あ、ホントだ」 耳を澄ませると、大和と聖の話し声が聞こえる。 ぎぎぃっと扉が開いて、焦げ茶色の髪で、大人の妖艶さを持った大和と、金髪に赤いメッシュを入れた私より背低い──つまり、五人の中で一番チビ──聖が入ってきた。 「大和っ聖っ!」 ぎゅっと左腕を大和の首に巻き付け、右腕を聖の首に巻き付けて抱き締め、二人の頬にキスをする。 「遅かったな」 梼貴の声に二人は苦笑する。あ、遅れた理由分かった。 「喧嘩ふっかけられたんだぁよ」 やっぱりな。聖独特の口調が私は案外好きだ。なァんか癒されるんだよなあ。 「何人?」 「十人。囲まれた」 あー、大和の声って、落ち着く。 それにしても、大和と聖、二人相手に大勢で囲むんかよ。ふざけてんな。叩きのめしてやろうか。 「ふぅん……負けたのか?」 私の声が冷たくなっていく。 「逃げて来た」 「仕方なぁい。武器隠し持ってたんだからあ」 へえ……。 自分でも、わかるくらいに双眸が細くなる。胃ぐらいの位置で、何かがぐるぐると渦を巻き、私にコトバを投げ掛ける。  
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