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あの場所は、家から歩いて数分の小高い丘の上。
その途中で、咲いていた小さな花もついでに持って行く。
「♪~」
小さく鼻歌混じりに、丘への道を歩く。
「よし、着いた」
丘に着くと、そこには小さな墓石が二つ並んであった。
その墓石に、それぞれ摘んだ花を供えて小さく呟く。
「今日も来たぜ。…母さん。それから親父」
そう。この墓石は、シンデレラの両親の墓。
二人の好きだったこの場所に、わざわざ墓を立てたのだ。
「今日は、花だけでごめんな。台所、あいつらが使っててさ。…まぁ、親父はそれでも十分だが」
そうやって、静かに墓石に語りかける。
大好きだった母親には優しく、父親には辛辣に。
それは、両親が生きていた時から変わらない。
シンデレラは、暇になるとこの場所に来る。
それから、今日あったことを二人に報告するのだ。
辛いことも、楽しかったことも何もかも全部話してまた家へと帰って行く。
それが、いつしかシンデレラの日課になっていた。
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