場違いな少女

5/7
前へ
/71ページ
次へ
あの場所は、家から歩いて数分の小高い丘の上。     その途中で、咲いていた小さな花もついでに持って行く。     「♪~」     小さく鼻歌混じりに、丘への道を歩く。     「よし、着いた」     丘に着くと、そこには小さな墓石が二つ並んであった。     その墓石に、それぞれ摘んだ花を供えて小さく呟く。     「今日も来たぜ。…母さん。それから親父」     そう。この墓石は、シンデレラの両親の墓。     二人の好きだったこの場所に、わざわざ墓を立てたのだ。     「今日は、花だけでごめんな。台所、あいつらが使っててさ。…まぁ、親父はそれでも十分だが」     そうやって、静かに墓石に語りかける。     大好きだった母親には優しく、父親には辛辣に。     それは、両親が生きていた時から変わらない。     シンデレラは、暇になるとこの場所に来る。     それから、今日あったことを二人に報告するのだ。     辛いことも、楽しかったことも何もかも全部話してまた家へと帰って行く。     それが、いつしかシンデレラの日課になっていた。    
/71ページ

最初のコメントを投稿しよう!

138人が本棚に入れています
本棚に追加