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【第一章、『山道』】
山道は想像より遥かに狭く、急だった。車を運転する部活の顧問、東田新平先生の顔が微かに曇った。しばらくすると、新平先生はこちらをみて苦笑した。
「ん?…………あれ?……ここは……」
引きつった顔の新平先生はそう言い、再び苦笑した。
「先生……シャレにならんて。」
俺、狭間悠斗がそう言うと先生は苦笑いでごまかそうとした。
「先生……まさか迷っただなんて言わないですよね?。」
俺と同じ大学の同級生、瀬戸七奈が冷たい視線で先生を見ながら言った。今日は七奈ちゃんと二人で一緒に心霊スポットの大きな屋敷の古屋に行く予定だった。が、大学でその話をしている時に新平先生が子供二人じゃ危ないと言い、ついて来ることとなったのだ。で、結局はこのザマ……道に迷ってやがる。
「バカ言え、先生ことこの新平が道に迷うはずないだろう?信じろ。」
妙に焦っている新平先生の心情が手にとるように分かった。頼りない先生だ……信じれねぇよ。
「じゃあ早く目的地まで行ってよ。」
相変わらず容赦と愛想のない言葉が七奈ちゃんから発せられる。攻めすぎたらなんだか哀れな気がしてきた。
道はさらに細く、急になっていった。雨も徐々にひどくなってきた。さすがに車では通れないらしい。新平先生のタメ息が聞こえた。
「仕方ない、ここから歩こうか……。」
先生はそう言うと俺と七奈ちゃんに目を向けた。もちろん俺たちはその考えに反対した。
「雨が降ってるし………無理だろ……。」
俺が代表してそう言うと先生は黙り込んだ。が、しばらくして
「ここにいても始まらん……行くぞ。」
と今度は強めに言ってきた。半ば強制気味だったが確かに先生の言う通りであった。俺たちは車から出て、山道、雨の降るもとを歩いていった。
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