零足目

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      とある日、彼女は何時ものように近道である公園を横切りバイト先へと足を運んでいる最中、あまり見かけない少年と出会った。少年は帽子を目深に被り、花壇の端に腰掛けながらつまらなさそうに脚をぶらぶらとさせている。良く見ると片方の靴が脱げている状態であった。 そんな少年の状況が気になって何故そんな事になっているのかと聞いてみると、 「転んだ拍子にどこかに飛んでいった」 と、あっけらかんとした物言いで少年は答えた。 「じゃあ代わりにこの靴履いて下さい。後、膝の傷に絆創膏貼っておきますね。」 彼女は少年のそんな物言いに苦笑を浮かべながらも彼の膝に絆創膏を貼り、自分の履いていた靴を脱いで渡す。 「え、でも…」 「あ、ボロボロなのはどうか目を瞑って下さい。もう何年も履いているものなので。お家に帰った後は捨ててしまって構いませんので、ではっ!!」 「あっ…ちょっ…」 彼女は少年の呼び止める声も聞かずに靴下のまま、その場を駆け出し後にした。 「…行っちゃったか「お待たせ致しました、篠芽(ササメ)様。」…遅い。」 「申し訳御座いませ………さっ、篠芽様そのお膝は一体…!!それに手にお持ちになっている汚い物はなんですかっ!?」 「汚いとか言うな、馬鹿者。これは…… シンデレラの置き土産…というところかな?」 「は…ぁ?」 少年は手に持っていた靴を履き、止まっていた車に乗り込んだ。 彼女の走り去った方向をじっと見つめ、深い笑みを浮かべながら……。  
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