一足目

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    ――半年後―― まだ殆どの人が寝静まっている早朝、新聞配達のバイトを終えた彼女は古い木造アパートの一つの部屋になるだけ音を立てないように静かに入っていった。 「ただいまです…」 「お帰り柚子。」 「お、お母さん!? …起きてたんですか?」 彼女…柚子は大声を出してしまった事に気付き、すぐに小声に直した。 そんな柚子にくすりと笑みを浮かべながら母親…桃は側に近づいてくる。 「ええついさっきね、それよりもごめんね柚子…。こんな朝早くからバイトなんかさせちゃって私が働けたら良いんだけど…」 「気にしないで下さい。お母さんは体が弱いのですからゆっくり休んでいて下さい。私がしっかり稼いできますからっ。」 体の弱い自分の代わりに働く娘に感謝と謝罪を伝えるも、何て事はないといったように柚子ははにかみながら答えた。 そんな娘の姿に益々自分の不甲斐なさを痛感し、桃はしゅんと俯いてしまう。 「…本当にごめんなさい。今日だって学校あるのに…」 「だから謝らないで下さ…「姉ちゃん帰ってたの?」」 「林梧。」 柚子が母親の言動に焦っていると、奥から学生服を身に纏った弟の林梧が顔を覗かせた。  
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