一足目

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    「あれ、どうしたんですか?制服なんて着て。まだ登校時間には早すぎると思いますが…」 「面倒な事に生徒会の集まりがあるんだよ。朝7時半に集合だってさ。」 「はぁ~、副会長も大変ですねぇ…。」 「…なあ姉ちゃん、やっぱ俺もバイトするよ。学校側に申請すれば新聞配達位出来るし…。」 「だっ駄目です!林梧はまだ中学生でしょうっ!?それに生徒会と勉強で忙しいじゃないですか!!」 「でも姉ちゃんだって朝、晩バイトしながら上位キープしてるじゃん」 「それでも駄目です!林梧にそんな事させる訳にはいきません!!良いですか?絶対駄目ですからね!!」 「……分かったよ。」 林梧は渋々ながらも了承の返事を返したが、林梧は内心納得がいっていない。 母親とは違って元気が有り余る自分がバイトに出れば、微々たるものでも確実に生活が楽になるというのは分かっているのに、年齢という壁。それに加え、大黒柱となっている姉の頑な反対が邪魔をする。 どうにか家族の為になる事をしたいのだが、今まで柚子がこの家を支えてきたというのを考えると、つい尻すぼみになり、強く言い返せないというのが現状である。 「さぁ話はそれ位にして、それよりも朝ご飯に致しましょう。」 「それなら今作ってる最中よ」 「ありがとうございます、お母さん。」 「サンキューな。」 「ふふ、良いのよ…だって私こんな事しか出来ないもの… いつも柚子や林梧に迷惑掛けて…掛けて…っ!」 そう言いながら桃は、顔を両手で覆い隠して泣き出してしまった。 「ああっお母さん泣かないで下さいっ!」 「ほっほら朝ご飯作ってくれるんだろっ!?」 「ええ…そうね、ちょっと待っててね?」 どんどんネガティブな方向に持って行く母親の気を2人は何とか逸らそうと試みる。それが上手くいったようで桃は涙を拭いながら少し嬉しそうに、料理を作るべく台所へと足を運んだ。  
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