01:ハジマリの日

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素直に謝ったことがとりあえず効を奏したのか、とりあえずディアンはテーブルに付くことを許される。 今日のメニューはベリル特製のリーフブレッドのハムサンドに、新鮮野菜のスープ。 あのいい匂いの元はこれだったのか、とディアンは心の中でほくそ笑んだ。なにしろ、自分の好物ばかりだ。 すべてのメニューを出し終えて、ベリルも席についた。 「あれ?おまえ、まだ食べてなかったのか?」 訊ねるディアンに、ベリルは一瞬不思議そうに弟を見つめ、薄く微笑う。 「君がいるのに、一人で食べたって美味しくないよ。 ・・・たった一人の家族、だもの」 言って、自分の発した言葉の恥ずかしさに気づいたベリルが、少し照れくさそうに笑った。 ディアンも、つられて笑う。 そうして、お互いに栗色の髪を掻き分け、その額を___正確には、額に抱く宝玉をふれあわせる。 ディアンのものは闇をとかしたような黒色、ベリルのものは空を写した湖水のようなエメラルド色。 そのふたつがふれあい、淡い虹彩を放つ。 それが、この村での親愛の挨拶。 「おはよう、ディアン」 「おはよう、ベリル」 朝のあいさつは、こうして多少の喧噪を含みつつも、穏やかに交わされた。 ******************************************************************* 「おいしかった!特にあのスープ!やっぱ、ベリルの料理はサイコーだよなあ!」 ベリル特製朝ご飯をおなかいっぱい堪能したディアンは、ご満悦でソファに転がった。 「はいはい、だってきみの大好物だものね。」 「・・・旅にでても、たべられるかな」 ディアンの言ったひとことで、ベリルは言葉に詰まる。 明朝、二人は旅に出ることが決まっていた。 村の掟で、16を迎えた子供は成人の儀式として旅に出なければならないからだ。 己と同じ宝玉を抱くもの、『対』となる者を探す旅に。 もう二人、同じく16を迎える者たち、幼なじみのローズ、ジャスパーと、共に___。 今は村中が、成人の儀式の準備をしてくれている真っ最中なのだ。 「つくるよ、どこにいても。」 ベリルが優しく笑って言う。 こんな時間が、好きだな、とディアンは想う。 ベリルに言うとつけ上がるから、内緒だけれど。
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