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何処とも分からぬ部屋 その隅で男が1人本を読んでいる 「おや、どちら様ですか?」 椅子に座った男が此方を見た 「お客さんとは珍しい ちょうどよかった、貴方にもこの本を見せてあげますよ」 差し出された奇妙な本 表紙に何も書かれていない 「別に大した本ではありません 私の日記のようなものです」 流石に他人の日記を読むのは不味いだろう 「今から読み直そうと思っただけなので気遣いや遠慮は無用ですよ」 此方の考えを読んだかのような言葉を口にする男 「今から読もうと思っていたモノは数百年前に私がソルトレス大陸で……っとすいません、貴方のいる世界の話ではありませんから訳が分かりませんよね」 此方がポカンとした顔で見ていると苦笑しながら訂正し始めた 「とにかく私がしばらく住んでいた大陸の一国家で体験した物語です けっこう楽しかったんでたまに読み返すんですよね」 笑顔で本を開く男 「まあ前置きはこのあたりにして早速読み始めましょうか 彼等の人生でおそらく最も輝いていた物語を――」 ひとりでに本のページが捲れ開いた見出しには一文字 『影の魔導師』
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