0人が本棚に入れています
本棚に追加
「人が落ちるかもしれないっていうのに動かないし」
楽しくて仕方ないのか、僕の反応が面白いのか。彼の明るい声は止みそうにない。
「他人に興味ないの?」
「ない」
思わず即答してしまう。
「君、面白いね」
それはそれは、今までにないっていうくらい楽しそうに。
僕は、こんな頭のイカレタ奴にそんなことを思われる筋合いはない。寧ろ、彼の方が僕なんかの何倍もおかしな思考の持ち主で、面白い人物だと思う。
「あんたに言われたくない」
「冷たいな」
残念そうな口ぶりとは裏腹に、視線を合わせた彼は生き生きしていた。
「生憎、愛想なんて持ち合わせていないので」
「そこがまた、面白いんだよ」
「……」
皮肉たっぷりに言ってやったのに、まったく効果がない。憎たらしいことこの上ない。
いらいらと、初夏の暑さで更に気分が悪くなる。
日陰に戻ってきた彼は、頬を伝う汗を拭い、
「ねえ、友達になってよ」
と、嫌になるくらい涼しげに言った。
最初のコメントを投稿しよう!