#1

3/9
前へ
/9ページ
次へ
次の授業は英語だ。数学のあとに英語だなんて、生徒への嫌がらせだとしか思えない。 学校中に響くチャイムが鳴り終わると、日差しから逃げるように窓際の自分の席から離れた。そのまま校内で一番人気の少ない階段を選び、最上階である屋上へと向かう。その足取りは慣れたもので、ポケットに手を突っ込むと、いつも忍ばせている鍵に指があたる。一年のときに屋上掃除を手伝っていて良かったと思う。あの時、鍵を返し忘れたおかげでこの合鍵を手に入れるチャンスを得たのだから。 四階の踊り場を過ぎると、鍵をポケットから取り出して手のひらに乗せる。穴に差し込もうと扉に手をかけるが、いつもとは違って何の抵抗もなくスライド式の扉がゆっくり開く。普段施錠されているはずなのに、何故だろうか。こんな時間に誰かいるのか。不思議に思いながら、砂っぽい屋上に足を踏み出し、後ろ手で鍵をかける。
/9ページ

最初のコメントを投稿しよう!

0人が本棚に入れています
本棚に追加