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「そっちこそ。よく教室抜け出してたのは、ここに来てたからか?」
驚いてしばらく立ったままでいると、彼は人の悪い笑みでからかうように言った。いつも教室で爽やかな笑みを浮かべている彼とは、まるで別人のようだ。
「…意外と見てるんだな」
立ったままでは顔に日差しがあたる。そう大きくはない給水タンクの影に隠れるため、膝を折って彼の横に腰を下ろした。背中を壁に預けると、そこだけひんやり冷たく心地いい。
「まあな」
何故だろう、この愛想のない彼を見慣れているわけではないのに、これが地なのだと自然と受け入れられる。だからか、常とは態度の違う彼のことについて問いたださなかった。
「どうやって入ったんだ?」
いつもの爽やかな彼だったら、会話をしようとは思わなかっただろう。
「あそこから」
そう言って彼が指差したのは、先ほど僕が入ってきた扉の方だった。
「鍵は」
真面目に答える気がないのか、そのふざけたような返答にいらっとする。自然、言葉もぶっきらぼうになっていた。
「開いてた」
「そうか」
何故開いていたのか。それが知りたかったのに、この分では答えてもらうことは出来ないだろう。
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