第 五 章

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「うちの前のボーカルの話したっけ?」 首を振る。 「前のボーカル。男だったんだけど……そいつと俺とくみで三人幼なじみで。実はコレ、三人オソロのストラップなの」 ……そうだったんだ。 「なんでやめちゃったの? バンド」 「バンドはやめてない」 「え?」 「ただ……そいつ、死んだんだ。去年」 言葉を失うあたしに「ごめん、暗い話で」と言って、竜之介は笑った。 「だから、これは形見みたいなもん。ちなみに、バンド名わざわざ変えたのもそーゆー理由。アイツとの思い出はそのままにしておきたかったからさ」 「……知らなかった」 「……言ってなかった」 「凄いね。みんな……」 「何が……?」 「立ち直ってて……」 ……大切な人を失ってるのに。 「まぁ、立ち直るとかよくわかんねぇけど。後追える訳でもないし、生きるしかないからな」 「そっか」 ……大切な人、失ったのはあたしだけじゃないんだよね。 ……いつまでも、逃げてちゃ……駄目だよね。  
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