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「うちの前のボーカルの話したっけ?」
首を振る。
「前のボーカル。男だったんだけど……そいつと俺とくみで三人幼なじみで。実はコレ、三人オソロのストラップなの」
……そうだったんだ。
「なんでやめちゃったの? バンド」
「バンドはやめてない」
「え?」
「ただ……そいつ、死んだんだ。去年」
言葉を失うあたしに「ごめん、暗い話で」と言って、竜之介は笑った。
「だから、これは形見みたいなもん。ちなみに、バンド名わざわざ変えたのもそーゆー理由。アイツとの思い出はそのままにしておきたかったからさ」
「……知らなかった」
「……言ってなかった」
「凄いね。みんな……」
「何が……?」
「立ち直ってて……」
……大切な人を失ってるのに。
「まぁ、立ち直るとかよくわかんねぇけど。後追える訳でもないし、生きるしかないからな」
「そっか」
……大切な人、失ったのはあたしだけじゃないんだよね。
……いつまでも、逃げてちゃ……駄目だよね。
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