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「今はこの問題を片付けよ。
考えるのはその後でも十分だから。」
そう言うが早く、俺は洞窟の壁に右手を着いて『光属性』の魔呪を紡ごうとした、その時だ。
右手に浄化の光を灯すと、俺へと一斉に災いの光りが襲い掛かってきた。
「何だこれ…ッ!!?」
咄嗟に身を引き、体勢を崩し地面にお尻を着いて絶句する。
予想外な事態に、俺達は愕然とした表情で『ソレ』を眺めた。
「意味、分かんねえぜ…!!」
さっきまで俺の身体があった場所に突出するかのような形で新たな源魔石が作られていた。
…どういう事か、サッパリ理解出来ない。
「一体全体どうなっているのか!!
これでは、生き物のようではないか…。」
洞窟自体が、まるで生き物のようで…浄化を拒んでいるような錯覚すら覚えた。
厄介なことになりそうだ。
「迂闊に浄化するんは危険みたいやな。
ディル、大丈夫か?」
背後から聞こえた、聞きなれた声よりやや低い声にハッとして後ろを見やる。
浄化を終えて、追い着いたらしいドッペルが険しい表情で尻餅を着いた俺を見つめていた。
「積み荷はオッケーや。
大量な魔石が出来上がったで。」
売ればお金になるかな、なんて考えた自分に苦笑いをする。
そのままアラミンの手を借りて、俺は落としていた尻を持ち上げながらドッペルに尋ねた。
「いい方法知らない?
危険な目に遭わないで、速やかに浄化出来そうなのとか…。」
ここまで来て、やっぱり諦めようか…なんてのは嫌すぎる。
放っておけば、カースの被害は間違いなく広がるだろうし…かと言って危険な目に遭うのは嫌だ。
「贅沢のやっちゃなι
ワイらの時代やと、この洞窟には『混沌の飛龍』が居ったで。
混沌に支配されてもうた飛龍で、ソイツが源魔石を作っとるて噂があったような気いする。」
うろ覚えらしく、些か確実性に欠ける内容だけれど…俺達はそれを首を横に振って否定した。
「有り得ねえぜ。
今、俺たちの世界に飛龍は居ねえ…争う人々に愛想尽かせて人の世界を見捨てた。」
溜息を吐きながらそう言ったアラミンにドッペルは目を丸くして俺たちを見つめる。
「1回だけ遭遇したけど、その飛龍は強制召喚された飛龍だしね。
それに、飛龍には従う理(り)が無いから…召喚されたとも考え難い感じ。」
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