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「1つお尋ね致します…。
本当に信用しても大丈夫なのですか?
その…色々と、信じがたいのですがι」
怖ず怖ず、といった様子で俺の右手に掴まるケイン皇子に問いかける民間人達。
信じられないのも、無理はない。
「この美の神である私が言うのだ…間違い無いよ。」
掴まれた状態なので、些か説得力が無いけど…仕方ないか。
そんな俺達を見て、民間人達は顔を見合わせると渋々頷いた。
「で、そん積み荷くれるか?
源魔石なんぞ物騒なもん、ワイらが浄化したる。」
「浄化…この多量な源魔石をか!!?
不可能だ!!!
この積み荷以外にも、まだ源魔石は洞窟に存在する…。」
ドッペルの言葉に、俺達は顔を見合わせて苦笑いを零した。
実力を知らない人からすれば、当たり前だろうな。
「心配しなくてもいいぜ。
俺達には『魔王』がいるからな。
こんな事、朝飯どころかおやつ前だぜ♪」
ニッと笑うアラミンに、俺は肩を竦めてケイン皇子を開放する。
開放されたケイン皇子は、俺を軽く睨んで乱れた衣服を整えた。
「私を捕獲していたこの方は、ディアレウス国の次期国王陛下。
真の実力は目にしていないが、その力があれば可能…だと思う。」
この作業はやった事が無い為、どうとも言えないんだけど…まあ出来るだろ。
不安そうに見つめてくる民間人達に笑顔を向けて頷くと、安心した表情をしてくれた。
「じゃ、場所空けてもら」
「お断り致します。」
俺の言葉を遮った言葉に、俺はピシリと笑顔のまま固まる。
予想外な事態に、アラミン達も動揺を隠しきれないでいた。
「我々は脅されている身の上です。
どうぞ、お許し下さいケイン皇子…。」
先程の安堵した表情は何だったのだろうか…些か疑問に残るそれは、次の言葉によってかき消される。
「どうしてもと云うのでしたら、我ら人…貴方々に牙を剥きましょう。」
真剣な顔色は本気を窺わせた。
それなら、仕方ない…下より俺達は強行突破をするつもりだったんだ。
「計画は順調やで、ディル。
『盗賊ゴッコ』の続きでもしよか。」
「同感だぜ。
くれないなら、命を奪わずに奪う!!」
「国の者には手を出したく無いですが…。
今回ばかりは仕方ないね。」
ふと背後で聞こえた声に、俺は一瞬だけ目を丸くして…ニヤリと笑う。
そんな俺にたじろぐ民間人達は、俺だけを標的にして…武器を構えた。
「来いよ、人。
魔王の実力、存分に味わせてやるから。
死ねない屈辱と、死ぬ程の後悔…覚める事の無い深い眠りに堕ちるといい。」
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