携帯電話

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目の前で起きている出来事が、理解できない。 そんな時、人間の脳はどんな働きをするのか? 答えは一つ。 そう。 現実逃避だ。 「そうか…コレは夢なんだ…」 もはや精神は崩壊しようとしていた。 しかし、目の前の出来事を夢だと思いこむ事で、かろうじて自我を保っていた。 一方、テレビの画面は、さっき迄はボンヤリと映っていた人影が、ハッキリとその姿を現した。 …年の頃なら40代前半だろうか? キッチリまとめられた髪型に清潔感を感じる。 そして彼は白衣を着ていた。 …あれ? …なんかドコかで見た様な気がする… デジャヴか? いや…違う…最近ドコかで会ったか? 中々思いだせないでいると、画面の中の彼が『ニコッ』と笑った。 !!!!! 思い出した! 先輩の病室に居たヤツだ! するとヤツはテレビの中から話かけてきた。 「どうもどうも。思い出して頂いた様で。」 …なんだ?コイツ? やけに馴れ馴れしいな。 するとヤツは一方的に喋り始めた。 「最近の世の中は便利でね~。こうして電波に乗って移動できるんですよね~。」 呆然としている俺を尻目に、ヤツは続ける。 「携帯電話を鳴らした時に、逃げられたらどうしようかと思いましたが…人間は実に簡単に、引っ掛かってくれる。」 何だコイツ? 一体何が言いたいんだ? 「ゆっくりしている時間もないので、そろそろ行きますか?」 そう言いながらヤツは、画面の手前の方に移動してきた。 ナンナンダコレハ? イッタイナニガオキテイルンダ? ユメナラハヤクサメテクレ… しかしコレは紛れもない現実だった…
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