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……………
圭一は、話が終わったと合図する様に、グラスの中の酒を一気に飲み干した。
…なんだかな~。
よりにもよって、話のオチが『死神』?
ちょっと無理がないか?
俺は圭一に言った。
「あのよ~、圭一。いくらなんでも、オカルト話にするのは、無理がねぇか?」
すると圭一は言う。
「ん?そうか?本当の事なんだが…やっぱり信じられないか?」
「当たり前だろ!よりにもよって、『死神』って何だよ。大体『死神』っていうのは、こう…何て言うか…骸骨で、黒い布を纏ってて…」
そこで圭一が口を挟む。
「それで、デカイ鎌を持ってるか?」
「そうだよ。そんなイメージだろ?それが白衣を着てるって言われてもなぁ。」
「でもそれは、俺達人間が作った、勝手なイメージだろ?案外普通に、社会に溶け込んでるかもしれないぞ?例えばあんな風に。」
圭一はそう言うと、カウンターの中のマスターを指差す。
一緒に話を聞いていたマスターが、ビックリして言い返す。
「ちょっと、及川さん。自分が『死神』ってあんまりですよ~。」
言われたマスターは、少し気を悪くした様だ。
「ハハハッ。ゴメンゴメン。ものの例えですよ。マスターがその『死神』に似てたんで、つい…ね。」
圭一は笑顔でマスターに謝ると「マスター!お代わり!」
新たに酒を注文した。
…随分と怖い事を言うヤツだな。
まさか本当なのか?
いくらなんでも、ネタだよな。
俺は言った。
「話としては中々面白かったけど、ちょっと非現実的だよな~。ま~だ『通り魔』とかにやられたって方が、現実味があるぜ?」
その時だった。
マスターが『ビクッ』と反応した。
そしてマスターが口を開いた。
「そういえば…3年程前になりますか、こんな事件がありましてね。」
マスターはいきなり、語り始めた…
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