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「何で持って帰ったか?それは私が、犯人を捕まえる為ですよ。指があれば『指紋』がわかりますからね。」
…俺は当たり前の事を聞く。
「しかしマスター、犯人を捕まえるのは、警察の仕事でしょう?わざわざマスターが捕まえなくても。」
するとマスターは…
「警察なんか!全然あてになりませんよ!現にまだ犯人は捕まってないんですから!」
不味い…余計な事を言ってしまった。
そうだよな…被害者感情を考えれば、当たり前の事だよな…
「すいませんマスター。失言でした。」
俺は深々と頭を下げた。
「いや。いいんですよ。私も少し興奮してしまって…申し訳ありません。」
マスターも深々と頭を下げる。
「いや…気にしないで下さい。しかし、マスター…『指紋』がわかった所で、どうやって犯人を探すんですか?まさか一人一人、指紋を採る訳にもいかないでしょ?」
「ふふふ…それはですね…コレですよ。」
そう言ってマスターが取り出したモノは…
…グラスだった。
「へ?グラスがどうかしたんですか?」
「コレはまだ洗ってないんですが…ホラ、こうすると…」
マスターはグラスを照明にかざしてみた。
…成程。
確かにグラスに指紋が付いている。
「こうしてね、指紋を一つ一つ調べるんですよ。」
まぁ…確かに…いつかは『犯人』が見つかるかもしれないが…
それも執念と言うヤツか。
「だから私は…この商売を始めたんですよ。」
そう言うとマスターは、グラスを静かに置いた。
「ところでマスター。」
今まで黙って聞いていた圭一が、急に口を開いた。
「俺が犯人だったら…どうしますか?」
マスターは圭一を見て言う。
「申し訳ないですが…及川さんの指紋は、既に調べましたよ。及川さんは犯人じゃないですよ。」
圭一は薄ら笑いを浮かべて、「そうでしたか。調べましたか。」
そう言うとグラスに目を落として、ボソッと言った。
『この……が』
何?
何て言ったんだ?
圭一の声は小さくて、聞き取れなかった…
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