携帯電話

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病院の受け付けでは受付嬢?が、何やら世話しなく働いている。 「あの~すみません。お見舞いに来たんですけど。入院病棟はドコでしょうか?」 「はい。お見舞いですね。患者様のお名前は?」 「広瀬…広瀬大輔です。」 「かしこまりました。広瀬様ですね。」 受付嬢はパソコンを見ながら… 「広瀬様は外科病棟の302号室ですね。外科病棟はコチラの廊下を歩いて頂いて、突き当たりを右に進んだ先になります。」 「どうもありがとうございます。」 俺は言われた通り先に進み、外科病棟を目指した。 そして歩きながら思う。 大体の人は病院が嫌いだと言う。 まぁ、大好きだと言う人間はあまり聞かない。 しかし俺は、この病院の独特の臭いが好きだ。 人間は大体の人が病院で産まれ、病院で死んでいく。 勿論全ての人間がそうとは限らないが。 少なくとも俺は病院で産まれた。 いわば産まれ故郷みたいなもんだ。 なのに何故、皆はそこまで毛嫌いするのか? …などとくだらない事を考えながら歩いていると、どうやら目的地に着いた様だ。 ナースステーションに居る看護師さんに声を掛ける。 「すみません。広瀬さんのお見舞いに来たんですけど。」 「はい。それではこちらのノートにお名前と時間、訪問先のお部屋と患者様のお名前をお願いします。」 俺は言われた通りに記入し、先輩の居る部屋に向かう。 「302…302…と、あったあった。」 入口のプレートに数人の名前に混じって、見慣れた名前があった。 「大部屋か…まぁ静かにしないとな。」 俺は部屋の扉をノックし、中に入る。 入院患者が一斉に俺の方を見る。 しかしその中に先輩の顔はない。 …どうやらあそこか。 一つだけカーテンで仕切られたベッドがある。 入って右側の一番奥。 俺は先輩のベッドに向かった。
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