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俺は仕切られたカーテンをそ~っと開けながら、
「せんぱ~い。可愛い後輩が来ましたよ~。」
そう言い先輩が寝ているハズのベッドを覗いてみた。
しかし、俺の目に飛び込んで来たのは人間の後頭部だった。
「あ…失礼。先客でしたか。」
その声に気付いたのか、その人はゆっくりとコチラを振り返り俺を見ながらニコっと微笑んだ。
…年の頃なら40代前半だろうか。
キッチリとセットされた髪型に清潔感を感じる。
それもそのハズ。
彼は白衣を着ていた。
あぁ…主治医の先生かな。
そう思った俺は彼に訊ねた。
「先輩の容態はどうですか?」
しかし彼は何も言わず、ニコニコしながら病室から去ってしまった。
「何か気ぃ使わしたみたいだな。」
まぁいいや。
そして俺は先輩の方に目を向けた。
…いやはや。大怪我とは聞いていたが…骨折かな?先輩は右足の先を包帯でグルグル巻きにされていた。
包帯のせいもあるだろうが、その右足は通常の3倍ほどの大きさに見えた。
「ん…誰だ?」
その時先輩が目を覚ました。
「先輩!俺ですよ!圭一です!」
「あぁ…圭一か…わざわざ来てくれたのか。スマンな。お前仕事は?」
「先輩の一大事に仕事なんかしてられませんよ!」
「全く…調子の良いヤツだな。まぁお前のそんな所が可愛いんだけどな。」
そう言って先輩は笑顔を見せる。
「しかし先輩。どうしたんすか?その足。事故でも起こしたんですか?」
「いや…事故じゃないんだが…家に居る時にチョットな。」
ん?随分と歯切れが悪いな。
よっぽど後輩に知られたくない、間抜けな怪我なのかな?
「骨折ですか?でもその割りにはギプスはしてないし…」
「骨折じゃなくて…切られた…あっ!じゃなくて潰れた!」
は?切られた?潰れた?
何故言い直したんだ?
話が少し掴めないまま、さらに聞いてみた。
「潰れたって…どの辺までですか?」
「足の前半分って言うのか?足の指先から足首に向かって半分位。」
はい?なにそれ?マジですか?
「それって滅茶苦茶大怪我じゃないですか!大丈夫なんすか?」
「まぁ大丈夫じゃないが…歩くのにも支障がでるだろうからなぁ…医者と相談するしかないかな?」
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