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先輩はそう言うと少し寂しそうに笑った。
………場を重たい空気が流れる。
不味い何とかしなくては。
俺は努めて明るい声で言った。
「そうだ!先輩!お見舞い持ってきたんすよ。ほら、先輩の好きなバナナ!それと週刊誌!他にも何か必要な物があれば言って下さい!何でも持って来ますよ!」
「おぉ…スマンな。助かるよ。持つべきものは可愛い後輩だな。」
なんとか場の空気が和んできた様だ。
「とりあえずコレだけあれば…あっ!先輩。俺PSP持ってますよ。先輩ゲームとかやります?あまりソフトはないけど、良かったら置いていきますよ?」
そう言いながら俺は、自分の鞄からPSPを取り出そうとした。
すると…
「やめろ!出すな!」
急に先輩が叫んだ。
固まる俺。
何だ?どうした?
俺、何か変な事したか?
「あ…悪い…しばらく『画面』を見たくないんだ…ホントにゴメン…」
え?『画面』を見たくない?
何だソレ?
そういえば…他の患者さんのベッドの脇にはテレビがあったが…
先輩のベッドの脇にはテレビがない。
だから昼間からカーテンを閉めているのか?
他の患者のテレビが見えない様に。
頭の中が混乱していると先輩が口を開いた。
「悪いが…今日は帰ってくれないか?少し動揺しているみたいだ」
そう言うと先輩は目を閉じて寝る仕草をしてみせた。
「わかりました…何かあったら連絡下さいね。また来ます。」
そう言うと俺は先輩の居る病室を後にした。
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