たった一つ信じられた約束

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私は小さい頃の夢を見た。 彼と出会ったあの日の夢を――……。 「……」 その日は雨が朝からずっと降っていて。 家にいるのは居心地が悪く、耐え切れなくなった私は傘も持たず外へ逃げた。 だから今の私公園で濡れ鼠になっている。 下を向いていたら突然雨が当たらなくなって私は驚き、顔を上げた。 目の前に一人の少年が立っていた。 「……そんなふうにいたらぬれちゃうよ…?」 心配そうに声をかけてくれた。 けれど私は 「いいの」 と、即答した。 心配されるつもりはない。 驚いた顔をして私を見た。 「……かぜひいちゃうよ?」 その男の子はまた心配そうに私を見つめた。 「いいの」 先程と同じように即答した。 「ねぇねぇ」 少年はいいことを思い付いたのか笑顔で言った。 「なに?」 「ぼくのおうちにこない?」 「……いや」 少し戸惑ったけれどすぐにいやだと返事をした。 「じゃあちょっとまってて!!!はい、かさ!」 「……あ」 その男の子は傘を私に渡して走っていった。 「……どうしょう」 数分後男の子は傘を持って戻ってきた。 タオルと水筒も持って。 「はい!」 男の子は水筒とタオルを私に渡した。 「……?」 「ぬれちゃってるからもってきたんだ!そのすいとうにはあたたかいのみものもいれてるってかあさんがいってた!」 「……」
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