2.危ない橋は叩いて砕く。

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 ってあれ?  本当に世界が回って……る……?  ぐんにゃりと視界が歪む。  そして次の瞬間、目の前が真っ暗になった。 「……リ。ユリ」  あたしを呼ぶ声がする。  優しい声。  ずっと聞いていたくて、あたしは寝たふりをする。 「ユリ、起きろ」  やだよぉ……あともう少しだけこのままでいさせて……。 「起きないとその姿、余すところなくカメラに納めるぞ」  かめら……?  不思議に思って目をうっすらと開くと、至近距離にムサシの顔。  近い! 近すぎるってばよ! 「なななななに!?」 「やっと起きたか。熱、少しは下がったか?」 「ほえ? 熱?」  きょとんとしているあたしに構わず、ムサシはあたしの頬に手をあてる。ひんやりとした手のひらが、心地よい。
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