3.一宿一飯の恩はカラダで。

5/16
前へ
/130ページ
次へ
「殴られるとわかってて、帰るつもりか?」 「仕方ないでしょ。あそこしか帰るとこないし」  あたしがそう言ってベッドから起き上がろうと身をよじらせると、隣りで横向きに寝ていたムサシは再びあたしを押さえつけた。 「な……にすんのよ、離してよ! てかこの手錠外してよ!」 「帰る必要はない。お前の母親には俺からうまく説明しておく」 「は?」  あっけに取られたあたしの頭を、ムサシはびっくりするくらい優しく抱き寄せた。  やだ……なんでそんなことすんのよ……。 「やめ……」 「お前は、ここにいろ。ここを帰るところにすればいい」  何それ。勝手に決めないでよ。  だいたい、今日出会ったばかりの男の家に住むわけないじゃない。本当に、コイツってば変わってる。  だけど。
/130ページ

最初のコメントを投稿しよう!

2684人が本棚に入れています
本棚に追加