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『しゅ……者だ!化け物!……の犬だ』
誰かの叫び声が聞こえた。
ロイドは辺りを見回したが、どこから聞こえているのか、わからない。
それどころか自分の姿すら見えない真っ暗な闇に包まれていた。
何が起こっているのか、全く状況がわからない。
『ころ……れる!』
何かを貫く感覚が右手からしたのと同時に闇が消え、今度は辺り一面火と血で真っ赤に染まっていた。
そして、右手の剣には心臓を一突きにされた人がいた。
その人は、すでに息絶えていた。
ロイドは、剣を離そうとするが、体が言うことを聞かない。
何度も動かそうとするが全く動かない。
それどころか自分の意志とは関係なく、剣に刺さっている死体を蹴り飛ばし、逃げ惑う人たちを躊躇なく殺していった。
『やめろ……やめてくれ!!』
何度も……何度も止めようした。
しかし、止まらない。
自分の体なのに何も出来ない。
そして、最後の人を殺したところでロイドは、目を覚ました。
窓から朝の光が差し込み。
小鳥が鳴いて朝だと告げている。
辺りを見回すと、菜奈たちが眠っていた。
それ見たロイドは、夢だと安堵する。
そして、今見た夢の事を考えた。
あれは、一体何だったのか。
記憶を失う前の自分?
それとも単なる夢なのか?
だが、人を貫く感覚は鮮明だった。
それに森での事もある。
記憶を失う前の自分は……多くの人を殺した。
違うと思いたい。でも、今の自分は、否定も肯定もできなかった。
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