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考えれば考える程苦しくなった。
ロイドは外の空気を吸いに家を出た。
まだ、朝方で街にはうっすらと霧がかり、太陽の光が所々に降り注ぎなんとも言えない景色が広がっていた。
『綺麗……だな』
綺麗な風景を見たのが初めてのような気がした。
どうして?
記憶を失う前は、こんな風景を見たことないのだろうか?
それとも、覚えていないだけなのだろうか?
しばらく、眺めているとドアが勢いよく開く音がした。
振り返ると、菜奈が今にも泣きそうな顔をしてロイドの名を呼んでいた。
目が覚め、ロイドに挨拶しようと寝ていた毛布を探した。
だが、そこにロイドの姿はなく慌てて出てきたのだ。
しかし、いつまで経ってもドアから動かなかった。
いや、動けなかった。
目の見えないから、探すに探せない。
声がしなければ見つけられない。
そんな菜奈にロイドは近づき優しく手を握る。
菜奈は、ロイドか確認すると居なくなった事を怒った。
そんな菜奈に、謝り優しく頭を撫でる。
しかし、菜奈の怒りは治まるどころか、さらに強くなっていった。
ロイドは、どうしてそこまで怒るのかわからなかった。
身内ならまだわかる。
でも、ロイドは赤の他人。
しかも、昨日出会ったばかりで、本人は記憶がない。
どこの誰かもわからない人間にいなくなるなとどうして怒る?
不気味な奴はいなくなってくれた方がいいんじゃないか?
ロイドは、菜奈の行動に少し戸惑った。
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