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『ねぇロイド!教会に行こう!』
『教会?』
『そう♪私、いつもお祈りしに行ってるの。今日はまだだから行こう』
菜奈は屈託のない笑顔でロイドの腕を引いた。
しかし、ロイドは乗り気ではなかった。
街に自分を追っている奴らが来ているかも知れない。
菜奈やハーネルに危険が及ぶかもしれない。
それだけは避けたい。
この平穏を壊したくない。
俯くロイドの肩をハーネルがトンと叩いた。
気分転換にいいだろうと進めた。
菜奈も、遠慮がちにロイドの腕を引いた。
そんな姿を見たロイドは、わかったと菜奈と家を出た。
街を歩くとすれ違う人が皆ロイドに冷たい視線を向けた。
不審な人間だと警戒しているのだ。
ロイドは、その視線に胸が痛くなった。
あの夢を見たせいだろうか?
『ロイド?どうしたの?』
『何が?』
『ごまかしてもダメだよ!苦しそうにしてたよ?』
『えっ?』
菜奈は、目が見えない分雰囲気で相手の表情が何となく読み取れる。
ロイドは、少し戸惑ったが菜奈に夢の事を話した。
菜奈は、何も言わず聞いていた。
ただの夢なのか記憶なのかわからない。
自分がどういう人間かわからず、不安だと話した。
それを聞いた菜奈は、記憶が戻るまでわからないと言った。
それは、ロイドにもわかっている。
しかし、不安は消えない。
それどころか不安は募るばかりだった。
すると菜奈が、自分がそばにいるとロイドの腕を強く握った。
出会ったばかりの人間をすぐ信用するのは良くないことは菜奈にもわかっていた。
記憶喪失ならなおさら。
でも、ロイドはそうは思えなかった。
教会であの声に導かれて出会った。
きっと信じていいんだと菜奈は考えた。
菜奈は、またロイドの腕を引き教会に向かった。
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