プロローグ

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『僕は……誰?』 青年は、森の中にいた。 どうしてここにいるのか、自分が誰なのかわからない。 しかも、ロングコートを身に纏い、腰には双剣を携えていた。 どうして剣を持っているのか、考えてもその答えは得られなかった。 辺りを見回してもどこにいるのか検討もつかなかった。 青年は、森の中を歩き始めた。 行く宛てなどなく、ただ闇雲に歩き続けていた。 すると、背後から鎧を身に纏った男たちが現れ、青年に刃を突き付ける。 1人は隊長格なのか鎧が少し違う。 『やはり、まだ生きていたか……さすが化け物だな』 『化け物?』 男の一言に体の奥で何かが反応するのを感じた。 何故自分を化け物と言うのか青年にはわからなかった。 しかし、男たちは有無を言わさず青年に襲い掛かって来たが、そこに青年の姿はなかった。 男たちは慌てて辺りを見回した。 1人が叫びを上げ男の横に倒れ込んで来た。 その男は、背中から心臓を一突きにされていた。 男が振り返ると自分以外の兵はすでに死体となっていた。 そしてその中心に青年は立っていた。 『ひっ……ば、化け物!!』 男は、剣を投げ捨て逃げ出した。 森の中をひたすら走り振り返ると青年の姿はなかった。 それに安心した男は、その場に座り込み、息を整えようとした。 大きく息を吸った瞬間、視界がぐるりと回り首のない体が目に入った。 その後ろには、青年が自分を見下ろす様に立っていた。 男は、薄れ行く意識の中、自分が負けたのだと悟った。 『ば……け……』 最後の言葉を言い終わる前に男は絶命した。 青年は、剣についた血を振り払ったところで我に返った。 『体が……勝手に……』 自分ではない誰かに操られているような感覚だった。 青年は、自分が恐ろしくなった。 剣を持つ手も震えていた。 返り血のついたコートを脱ぎ捨て、剣も捨てようとした。 しかし、剣を離すことが出来ない。 まるで自分の手じゃないかの様に剣を握ったままだった。 青年は、仕方なく剣を鞘に納めた。 すると、さっきまで動かなかった手が剣から離れた。 そんなに大事な剣なのだろうか? 青年は、わからないままその場を走り去った。
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