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森の中をひたすら走る。
どこへ向かっているのかわからない。
ただ逃げるしかなかった。
夕暮れが近くなり、足が鉛の様に重くなってきた。
それでも、足を止めるわけにはいかなかった。
あの男達の仲間がまだ自分を追っているかも知れない。
走り続けてると、小さな泉を見つけた。
青年は、泉の水を飲もうと顔を近づけると血が付いている事に気づいた。
その血を拭おうとしたが、手にも血が付いていた。
青年は、慌てて手と顔を洗った。
『どうして僕は……』
腰に携えた双剣を取り見つめた。
どうしてこんな剣を持っているのか。
どうしてこの森にいたのか。
どうして追われているのか。
記憶を失う前は何をしていたのだろう?
名前も何も思い出せない。
思い出そうとすると頭痛に襲われる。
青年は、剣をしまい立ち上がった。
このままここにいても仕方がない。
とにかく街に行けば何かわかるかも知れない。
そんな希望を胸に青年は、歩き出した。
しかし、どれだけ歩いても街は見えず、見えるのは木ばかり。
疲れが見えはじめた時、背後から気配を感じ振り返ると鎧の男達が立っていた。
すると、また自分の意思とは関係なく体が動き出した。
男達を敵と見なし、完全に息の根を絶った。
どこを切れば死ぬか、体は知っている。
記憶を失う前の自分は人殺しなのか?
化け物と呼ばれてるくらいだから多くの人を殺したのかも知れない。
疲れているせいか、悪いことばかり考えてしまう。
辺りもすっかり暗くなり、このままでは野宿になってしまう。
フラフラと歩き出そうとした時、うっすらと灯りが見えた。
青年は、その灯りを目指し走った。
重い足をなんとか動かして辿り着いたのは、小さな街だった。
辿り着いたとたん体から力が抜け、青年はその場に倒れ込んだ。
しかし、街の人は倒れた青年を助けようとはしなかった。
むしろ冷たい目線で青年を見下ろし通り過ぎていく。
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