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街外れにある小さな小屋に一人の老人 ハーネルと目の見えない少女 菜奈が住んでいた。
菜奈の両親は、早く他界していた。
そのため菜奈に代わって、ハーネルが働いていた。
しかし、働き盛りの大人に比べれば、給料は、はるかに少ない。
決して裕福ではなかったが、楽しく暮らしていた。
『じゃ、行って来るね。おじいちゃん』
『あぁ、気をつけて行っておいで。もう暗いんだからね』
『平気よ。私には関係ないもの』
夜になると菜奈は、教会にお祈りしに行く。
菜奈の日課だった。
しかも決まって夜に。
昼間は街の人達が目の見えない菜奈に手を差し伸べて来る。
目の見えない菜奈を助けることで、自分は健常者だという優越感に浸れるからだ。
だから菜奈は夜に外に出る。
暗闇では街の人達も菜奈と同じ、灯りがあると言っても昼間程明るくはない。
健常者だとしても行動を制限される。
そんな街の人をしり目に菜奈は、教会に向かった。
教会は街の中心にあった。
通い慣れた道は、杖がなくても通れる。
教会に着くと、祭壇へ近付き祈りを捧げる。
『神様、今日も無事に来ることが出来ました。ありがとうございます。明日もまた来れます様に……今日は……』
“街……入口”
『えっ!?』
声だけが聞こえる。
目が見えないのだから声だけなのはいつものことなのだが、今日は違う。
人の気配が全く感じられない。
『誰なの!?』
“街の入口に青年が倒れてる”
『えっ!?』
“助けてやれ”
『まさか…神様!?』
その質問に答える声はなく、しばらく沈黙があった。
“さぁ、早く”
『は、はい!』
慌てて教会を後にし、街の入口へ向かう。
と言っても走れるわけもなく、早歩きで向かう。
入口にたどり着くが、どこに青年が倒れているのかわからず歩き回ると、何かにつまづき転んでしまった。
『痛っ!何?』
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