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部屋の中に入ると、小さな机と二つイス、そしてベッドと暖炉が一つあるだけで他に何もなかった。
ハーネルは、青年を椅子に座らせた。
『その剣は?』
『わかりません』
『わからない?』
青年の言葉にハーネルは耳を疑った。
自分の持ち物だと言うのに、わからないなんて馬鹿にされているのかと少し苛立ちを覚えた。
しかし、菜奈のいる前で手前、怒るわけにもいかず、抑え気味に聞き返した。
青年は、何も覚えていないと話した。
気がついた時には森の中にいて、双剣を携えていたこと。
複数の男達に襲われたこと、全てを話した。
ハーネルは最初半信半疑だったが、必死に訴えてる青年の姿に嘘はないと感じた。
『しばらくここにいなさい。まぁロクなもてなしは出来ないが、野宿よりはマシだろう』
『ありがとう……ございます』
青年は、小さくそう呟いた。
するとハーネルが名前を尋ねてきた。
しかし、青年は、名前からの一切の記憶がないため、答えられなかった。
困り果てたハーネルが、ふと剣に目をやる。
『その剣、そこらにある剣ではないようだから何かヒントがあるかも知れん』
『名前が書いてあるわけないじゃないでしょ?』
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