出会い

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『もちろん、名前が書いてあるわけじゃない。記憶を呼び起こすきっかけだ』 ハーネルは昔、商人をしていた。 色々な物を見てきた。 だから、剣を見れば何かわかるかも知れない。 そんなハーネルの言葉に青年は、双剣の片方を渡した。 その剣は、日本刀をもう少し細長く鍔がない。 そして柄の部分には紋章の様な飾りが施されていた。 剣を一通り見終わると青年に返した。 ハーネルは、隅々まで剣を見たが分からなかった。 紋章も見たことなかった。 すると、青年は自分を襲った男たちが自分の事を化け物と言ったと話した。 菜奈が化け物?と聞き返した。 青年は、うんと頷いた。 そして、男たちが化け物と言った理由が何となく分かる気がすると言った。 人間には到底出来な身のこなし、気がつけば辺りは死体の山。 そんな自分が恐ろしくなった。 自分が誰なのか。 どうして記憶をなくしたのか。 考えよとすれば、頭痛が邪魔をされる。 青年は、頭を抱えた。 するとハーネルが焦らなくていいと優しく頭を撫でた。 ハーネルの言葉に青年はゆっくりと頷いた。 『でも、困ったね。なんて呼べば?』 “ロイド” 『えっ!?』 教会で聞いたあの声だった。 人ではない何かの声。 その声は、青年の名をロイドだと告げた。 菜奈は、誰なのかその声に尋ねたが返事がなかった。 1人で話をしている菜奈を不思議に思ったハーネルは、菜奈にどうしたのか尋ねた。 菜奈は、その言葉で我に返った。 そして、その声は自分にしか聞こえないのだと気づいた。 菜奈は、なんでもないと誤魔化し、青年の名をロイドにしようと提案した。
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