第9章

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また冗談かと思ってた。 あの時みたいに。 でも海斗は真剣な表情だ。 「ずっと前から、好きだった」 海斗はゆっくりと告白を繰り返す。 私は海斗を見た。 「海斗」 「…返事は今じゃなくてもいいんだ、ずっと待ってるし…」 「…忘れさせてくれるの?」 私の呟きに、海斗はびっくりしたようにこちらを見た。 「和人さんを、忘れさせてくれるの?」 その言葉に、海斗は私を強く抱き締めた。海斗の胸の中で、私は静かに目を閉じる。 「忘れさせてやる」 海斗は私を抱き締めたまま囁く。 強い言葉。 ほんとに忘れられるかもしれない。 海斗となら、きっと苦しい恋はしないだろう。 海斗は私の頬に触れると、ぎこちなく唇にキスをした。 不器用だけど、優しいキス。 「好きだ」 海斗が何度も繰り返す告白を、私は彼の胸で聞いていた。
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