第10章

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『今日さ、暇?』 海斗が携帯ごしに言う。何だか声がうわずってる。 「なに?」 『あのさ、今日。食事に行かね?ホテル予約したから』 「え?」 『あ、嫌ならいいんだ。ご飯だけでもいいし』 慌てた様に海斗は言う。 下心みえみえだ。 その様子が可笑しくて私は吹き出した。 「なんか変な事考えてない?」 海斗が携帯ごしにむせ込む。 『ば、馬鹿!それよりいくのか行かないのかはっきりしろ!』 「分かった、何時?」 『え?』 あっさりとした返事に海斗は変な声をあげる。 『あ、えと。店に5時て間に合う?』 「うん、分かったよ」 携帯を切る直前、海斗が「ヨッシャー」と叫んだのが聞こえたから、私はベッドの上で笑い転げた。 この時までは、 本当に忘れかけてたんだ。 和人の事を。
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