第10章

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その時、扉が激しく叩かれた。 「優花!」 和人の声が響く。 海斗はため息をつくと、私から身を離した。 「行けよ、優花」 静かな海斗の言葉に、私はベッドから起き上がる。 海斗はベッドに座り込むとこちらを見た。 「もう。終わりにしよう」 海斗は目を閉じ、自分に言い聞かせるように言葉を吐いた。 「海斗」 「だって、忘れられなかったんだろ。 だから俺の負け。終わりにしような?」 冗談ぽく笑うと海斗は、再び強く言った。 私とは目を合わさず、入り口の扉を指差す。 「行けよ、お前の王子様のとこに」 私は、そっと海斗に近寄ると、海斗の頬に軽く唇を寄せた。 海斗は目を開け私を見る。 「海斗はちゃんと勝ってたよ。 海斗といるときは忘れていられたんだ。 ありがとう、辛い時にいつも側にいてくれて」 私は唇を離すと深く頭を下げる。 そして扉を開き、外に出た。 私が入り口をでた後、海斗はベッドに倒れこんだ。 「あーあ、せつねぇ」 両手で両目を覆うと海斗はいつまでもベッドに寝転んでいた。
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