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その時、扉が激しく叩かれた。
「優花!」
和人の声が響く。
海斗はため息をつくと、私から身を離した。
「行けよ、優花」
静かな海斗の言葉に、私はベッドから起き上がる。
海斗はベッドに座り込むとこちらを見た。
「もう。終わりにしよう」
海斗は目を閉じ、自分に言い聞かせるように言葉を吐いた。
「海斗」
「だって、忘れられなかったんだろ。
だから俺の負け。終わりにしような?」
冗談ぽく笑うと海斗は、再び強く言った。
私とは目を合わさず、入り口の扉を指差す。
「行けよ、お前の王子様のとこに」
私は、そっと海斗に近寄ると、海斗の頬に軽く唇を寄せた。
海斗は目を開け私を見る。
「海斗はちゃんと勝ってたよ。
海斗といるときは忘れていられたんだ。
ありがとう、辛い時にいつも側にいてくれて」
私は唇を離すと深く頭を下げる。
そして扉を開き、外に出た。
私が入り口をでた後、海斗はベッドに倒れこんだ。
「あーあ、せつねぇ」
両手で両目を覆うと海斗はいつまでもベッドに寝転んでいた。
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