第10章

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扉を開けると、いきなり抱きすくめられる。 煙草の香り。 和人は私を抱きしめたまま動かない。 「和人さん」 名前を呼ぶ。 その声に和人は私を見つめた。 「もう離さないから」 和人の言葉が私の心を占めていく。 私は彼の背中に手を回した。 「優花」 名前を呼ばれることがこんなにも嬉しいなんて。 抱きしめられるその腕がこんなにも愛しいなんて。 私達はそのまま動かずにいた。 お互いにその愛しい感触を求めあいながら。
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