第11章

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『蝶の夢』につくと、海斗がドレッサーの前で化粧品の確認をしていた。 私を見つけ、やや気まずそうな表情を見せる。 「よお」 私は黙ったまま入り口から動かずにいた。 「ひ、久しぶり。元気だった?」 ようやく言葉を絞り出す。 海斗は少しあっけにとられた表情を浮かべた。 「まだ3日しかたってねぇよ」 口許に笑みを浮かべ、私をドレッサーの前に促す。 私は促されるまま椅子に座った。 「あのさ、こないだはゴメン」 海斗が、メイクをはじめながら申し訳無さそうに言った。 私が首をふると、「動くな」と手で頭を押さえられる。 「俺、焦ってたんだわ。お前の中から和人さんを消したくて。でも、やっぱり無理だったわ」 ファンデーションを塗りながら海斗は笑う。 「そんな事ない」 私は目を開いて海斗を見る。 「海斗がいたから、私は辛い時を乗り越えられたんだよ。本当に感謝してる。 だから、謝らないでよ」 海斗は黙って指を動かす。 私は再び目を閉じた。 この時間が本当に好きだった。 でも、今日で終わるんだ。 改めて考えると胸が切ない。
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