番外編

16/34
前へ
/204ページ
次へ
食事の後、一言も話さないまま、俺は優花と別れた。 別れ際、優花は困惑した表情を見せていたっけ。 家に帰り、灯りを灯す。 誰もいない室内。 心が悲鳴を上げる。 『辛いなら無理して笑わなくてもいいですよ』 ふと、優花の言葉を思い出した。 俺の気持ちをストレートに見抜いてきた彼女。 彼女がなんだか気になった。 ママは僕のプライベートは明かさないと約束してた。 それなのに彼女が僕の気持ちを理解してくれた事に興味を持った。 「辛いなら笑わなくてもいい、か」 ずっと隠していた俺の辛さを、もしかしたら彼女は理解してくれるかもしれない。 そんな期待を胸に抱く。 優花の顔を思い出すと、胸が小さく痛んだ。 それがなんなのかこの時の俺にはわからずにいた。
/204ページ

最初のコメントを投稿しよう!

46985人が本棚に入れています
本棚に追加