第3章

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予定より早く待ち合わせ場所に到着する。 私は肩のストールを引き上げながら彼を待った。 春とはいえ、夜はまだ肌寒い。 時折酔ったサラリーマンが、目の前を通りすぎる。 街はすっかり薄暗く、昼間とは違う顔を見せている。 「優花ちゃん?」 後ろから声がした。 少しトーンの低い心地いい声。 振り向くと、紺のスーツに身を包んだ背の高い青年が笑いかけた。 年は30だと以前いっていた。だけどそうは見えないくらい若々しく、どう見ても20代前半だ。 やや栗色の髪は、前髪が細くサラサラでいつも触れてみたいと思ってしまう。その瞳は優しい光をたたえていた。 「ゴメンね、遅くなって。仕事が長引いちゃってさ」 そういって彼は申し訳なさそうに笑顔を浮かべる。 かなり年上なのに、なんだか可愛いから不思議だ。
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