46984人が本棚に入れています
本棚に追加
/204ページ
予定より早く待ち合わせ場所に到着する。
私は肩のストールを引き上げながら彼を待った。
春とはいえ、夜はまだ肌寒い。
時折酔ったサラリーマンが、目の前を通りすぎる。
街はすっかり薄暗く、昼間とは違う顔を見せている。
「優花ちゃん?」
後ろから声がした。
少しトーンの低い心地いい声。
振り向くと、紺のスーツに身を包んだ背の高い青年が笑いかけた。
年は30だと以前いっていた。だけどそうは見えないくらい若々しく、どう見ても20代前半だ。
やや栗色の髪は、前髪が細くサラサラでいつも触れてみたいと思ってしまう。その瞳は優しい光をたたえていた。
「ゴメンね、遅くなって。仕事が長引いちゃってさ」
そういって彼は申し訳なさそうに笑顔を浮かべる。
かなり年上なのに、なんだか可愛いから不思議だ。
最初のコメントを投稿しよう!