第3章

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「えーと、この後どうする? 何にも予定がないなら、行きたいところあるんだけど」 会計を済ませた和人は、私に聞く。 私はちらりと時計を見た。 時計は9時半を過ぎている。 「大丈夫ですよ。 どこでも付き合います」 私は笑顔で答えた。 駅前の駐車場に止めていた和人の車に乗り込む。 助手席に座ると、彼が左腕を私の席の後ろに置いた。 私は思わずどきりとする。 その様子に気づいたのか、和人は小さく笑った。 「車バックする時はバックミラー見えにくくて、こうしないと不安でさ」 よく、車をバックする彼の仕草にドキドキするって言うけど。 解るかも。 彼の身体が近い。 ふわりと香るコロンと、マルボロの香り。 このまま胸に飛び込めたら、どんなに良いだろう。 でも、それは出来ないから。 この時を終わりにしたくない。 私は、車を移動する彼の横顔をこっそりと見つめていた。
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