第3章

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私は後ろを振りかえる。 地上に、綺麗なイルミネーションが見えた。 ピンクのハートマークがなんだか可愛い。 「和人さん、あれ見て」 私が言うと、和人は私の席に移動してそっと窓に手を置く。 「どれ?」 胸元が私の顔の前に来る。 私は和人の腕に囲まれる形になった。 抱きしめられるかと思った。 どきどきしながらも私はイルミネーションの場所を和人に教える。 「…本当に、可愛いな」 私を見下ろし笑う和人。 そしてそのまま見つめあう。 不意に額に当たる柔らかな感触。 和人が額にキスをした。 突然の事に、私は息がつまる。 私は下を向き震える声で言う。 「…駄目。ママに怒られちゃうから」 「だよね、ごめん」 和人は子供の様に笑った。 和人は横に座ると、私の肩を抱き窓を見つめる。 「なんか優花ちゃん可愛いから。本当にごめん」 和人は申し訳なさそうに言った。 「…いいです。今は貴方の恋人ですから。それに、契約内です」 私は気持ちを悟られない様に、平静を装うふりをした。 本当は平静なんかじゃないのに。
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