第4章

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初めて会った時もそうだった。 高一の冬。 たまたま塾帰りに、若い女と歩く父を見つけた。 父は、家では見せない顔で女性の肩を抱き歩いてた。 はじめて知った父の浮気に、私は激しく動揺をおぼえた。 訳がわからないままふらふらと街を歩く。 雑踏の中に座り込み、膝を抱えて泣いていたら頭の上から声が降ってきた。 「腹、すかねぇ?」 ナンパか。最初はそう思い顔を上げると、そこにいたのは仏頂面の青年。 黒いバッグを肩に下げた青年は、私の横に座ると、バッグから小さな飴玉を取りだし私に突きつけた。 「ほら。食えば?」 変な奴。 そう思いながらも、私は飴を受けとる。 包みを剥がすと、小さな赤い飴がコロンと飛び出した。 そっと口に運ぶ。 いちご味だ。 甘酸っぱい優しい味に、私は彼を見た。 「美味しい」 「そっか」 彼は仏頂面をふっと優しく緩めた。
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