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彼は私の横に座り込み、歩く人を眺めている。
「なんで、ずっといるの?」
問いかける私に、彼はしばらく考えてから答える。
「なんか、独りになりたくないって顔をしてっから」
優しい声。
その声に涙腺が緩くなる。
「聞いてやろうか?話くらいなら聞く」
「…え?」
「だって、苦しそうだから。
誰かに話せば少しはスッキリするよ」
私は、その言葉を皮切りに大きく泣き出した。
彼は動揺もせず、ただポンッと頭に手を添える。
「お、お父さんが、浮気してたの」
「うん」
「お母さんも、めったにうちにいないし、家にいてもつまらないの」
「うん」
「帰りたく、ないよ。あんな家に」
いつの間にか名前も知らないその人に、気持ちを打ち明けていた。
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